AIの回答から伸びる金の線が途中で途切れ、行き先の分からない扉へ続く様子を描いた、黒と金の抽象的な線画イラスト

生成AI経由でサイトに来た訪問者は、AI側の仕様が少し変わるだけで「どこから来たのか分からない訪問」として記録されてしまう——2026年10月にChatGPTで起きた計測の不具合は、AI流入を数字で捉えることの不安定さをはっきりと示しました。

ChatGPTは2025年から、回答内のリンクに「utm_source=chatgpt.com」という目印を付けており、アクセス解析ツールはこれを手がかりに「ChatGPTから来た訪問」を見分けてきました。ところが、新モデルGPT-6の提供が始まった直後の10月9日ごろから、多くのリンクでこの目印と、参照元(リファラー)の情報がともに付かなくなったと海外の専門メディアが相次いで報じました。

2026年10月、ChatGPTからの流入に何が起きたのか

AI検索の分析サービスを提供するLLM Pulseは、Googleアナリティクス4上のChatGPT経由のセッションが、10月9日〜11日に前の2週間の同じ曜日と比べて約46%減ったと報告しています。一方で、同じサイト群の総流入はほぼ横ばい(約2%減)で、PerplexityやClaudeからの流入には同じ時期の変化が見られませんでした。

Adobeのセドリック・ヒュースラー氏の分析では、ChatGPTからの流入が多かった約500ページで、10月9日〜13日にChatGPT経由の訪問が1日あたり約3万1,000件減る一方、「直接流入」が約2万6,000件増えていたとされます。訪問そのものが消えたのではなく、「ChatGPTから来た」という記録が消え、出どころ不明の訪問に置き換わった可能性が高いということです。

報道によれば、OpenAIは問題を認めたものの公式な発表は行っておらず、10月15〜16日ごろから目印は再び付くようになりました。ただし参照元の情報は多くのクリックで欠けたままとされ、不具合の期間に記録されたデータも「直接流入」のまま残ります。

なぜ「直接流入」に紛れることが問題なのか

「直接流入」は本来、ブックマークやURLの直接入力などで訪れた人を指す分類です。ここにAI経由の訪問が混ざると、AIから来た人が減ったように見え、同時に「なぜか直接の訪問が増えた」という、実態と異なる読み方を招きます。

特に、AI経由の流入はまだ全体に占める割合が小さいサイトが多く、少しの記録漏れでも傾向の判断が大きく揺れます。「AI検索への対応が成果につながっているか」を数字で確かめようとしても、その数字の前提が外部サービスの仕様ひとつで崩れうる。今回の件は、その構造を浮き彫りにしました。

AI流入の数字とは、どう向き合うべきか

今回の不具合は約1週間で修正に向かいましたが、AIサービスの画面やリンクの仕組みは今後も頻繁に変わると考えられます。AI経由の流入を示す数字は、ひとつの指標を単独で信じるより、「どんな前提で記録された数字なのか」を意識して読むことが求められる段階に入ったといえるでしょう。

また、AIの回答の中で紹介されること自体は、たとえ訪問として記録されなくても、社名や考え方を知ってもらう接点になっています。数字に表れる流入だけでなく、AIに参照されるだけの中身のある情報をサイトに備えておくことの意味は、むしろ大きくなっています。

まとめ:見えている数字が、すべてではない

今回の数値は特定のツールやサンプルにもとづく海外の分析であり、すべてのサイトに同じ影響があったとは限りません。それでも、「AIから来た訪問者」がツールの仕様次第で見えたり見えなくなったりするという事実は、AI検索時代のサイト運営に共通する前提として押さえておきたいところです。

AI経由の流入が少ない、あるいは減ったように見えるときも、それが実態の変化なのか、記録のされ方の変化なのかを一度立ち止まって考える。そうした冷静さが、これからの数字との付き合い方に欠かせなくなっていきそうです。